ありそうでない出向の定義

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はじめに

グループ会社のある会社などで働くと、「出向」という言葉を耳にすることがあるかと思います。
「グループの別の会社にいくんだなぁ~」だけで済めばよいですが、
殊更人事担当者になると、その認識では事足りません。
かといって、法律上の定義は結構調べてみても出てきません。

出向の定義

どうして調べても出てこないのか。
それは、・・・出向の定義が「ない」からです。

まぼろしの・・・

しかし!
実は労働契約法を作ろうとしたときに、
出向の定義を法律に記載しよう!という案がありました。
―――――――――――――――――――――――――
労働契約法
(出向)
第十四条 使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。
2 前項の「出向」とは、使用者が、その使用する労働者との間の労働契約に基づく関係を継続すること、第三者が当該労働者を使用すること及び当該第三者が当該労働者に対して負うこととなる義務の範囲について定める契約(以下この項において「出向契約」という。)を第三者との間で締結し、労働者が、当該出向契約に基づき、当該使用者との間の労働契約に基づく関係を継続しつつ、当該第三者との間の労働契約に基づく関係の下に、当該第三者に使用されて労働に従事することをいう。
※第一六六回 閣第八〇号労働契約法案
―――――――――――――――――――――――――

案を作成した政府側としては、
「出向の定義をきちんと書いて法律関係が明確になるようにしたいということでこういう規定を置いた」
ようですが、
「この二項の定義だと、出向元が業として第三者に労働者を出向させる場合も含むというふうに読み取れて、職業安定法で禁止をしている労働者供給事業までをも含むように読み取られる危険性がある」
ということで、
※第168回国会 厚生労働委員会 第4号

この2項が削除されて労働契約法が成立しました。
※第168回国会 厚生労働委員会 第5号

まぼろしの定義ですが、ぜひ参考にしてみてください。

e-gov「労働契約法」

他制度との違い

出向は、主に「派遣契約」と「業務委託契約」との違いを意識する必要があります。
ポイントは労働契約がどことどこの間にあるのかということ。
派遣は、派遣元と派遣労働者の間にしかありません。
業務委託は、業務委託先とその従業員との間にしかありません。
出向は、出向元と出向労働者との間、出向先と出向労働者との間にそれぞれ労働契約が成立しています。
二重に労働契約があるというよりは、労働契約の内容が出向元と出向先に分割されるイメージです。
(まぼろしの出向の定義で「義務の範囲について」と記載してあるように)
詳細は出向契約によりますが、例えば賃金支払いは出向元と、指揮命令は出向先とという感じです。
詳細は、出向契約についてぜひ調べてみてください。

以 上

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